鏡の中の七月

2-噂話

 七月が喧嘩をしているのを目撃してから数日が過ぎた。黒沼は、七月に会うたびに質問をしようとするが、七月は何も答えようとはしなかった。そればかりか、黒沼と目線が合うとどこか他の場所に行ってしまうようになった。

「どうすればいいんだ……」

 黒沼は、夕焼けの沈んでいく街並みを見ながらそう呟く。

「おいおい、なにたそがれてんだ。高校生じゃあるまいし」
「?」

 ここにいるのは自分一人だと思っていた黒沼は少し驚く。けれど、

「金切深夜君の登場だぜ。きらん☆」

 と、悪ふざけをする金切の顔を見て納得がいった。あまり使われていない屋上だが、金切となると別だ。彼は、ここでよくタバコを吸う。最初は、そのことで喧嘩になった。この屋上は喫煙所ではない。だから、別のところにいけ。軽く言ったら殴りあいになったのだ。馬鹿みたいなことで喧嘩したが、殴りあったあとに理由を聞いたらこおう答えが返ってきた。「青春みたいでカッコいいじゃん」と、その言葉を聞いて黒沼は許してしまった。それ以来ここは、二人の聖地見たいになっている。

「それで、何たそがれてるんだ。女にでも振られたか?」

 タバコを取り出し、口に咥えつつ金切は気軽に問う。彼のいつも通りの態度に沈んでいた気分が少し晴れた。だから、黒沼もいつもの調子で軽く答える。

「何言ってんだ。大体、俺には彼女がいるだろ」
「あぁ、いたなあの陰気な子。名前なだっけ?」

 返ってきた反応がこれまたいつも通りだったので、黒沼はずっこけそうになった。

「おいおい、ひでぇな人の彼女を陰気な子って割り切っていうかよ普通。それにだ、一応同じゼミの人間だぞ。名前ぐらい覚えておけよ」
「悪い悪い。で、名前は?」

 金切に反省の色は一切見られない。

「つかっわぁ」

 そんな態度に黒沼は苦笑を浮かべ彼女の名前を答えようとしたが、突然の衝撃を受けて言葉を取りこぼした。

「やほー色男君」

2011-03-23 02:03:00( 更新 2011-03-23 02:03:00 )